「学習」と聞くと、どんなイメージを抱きますか?
学校の勉強、スポーツの技術習得、外国語を覚えることや習い事…。
「自分にはない外の知識を吸収すること」
そう考える人が多いのではないでしょうか。
でも、フェルデンクライス・メソッドで言う「学習」は、少し違います。
目次
人間の持つ学ぶ力
私たちは、他の動物と比べてとても未熟な状態で生まれてきます。
多くの哺乳類の赤ちゃんが生まれて数日で歩き始めるのに対し、私たち人間が
二足歩行を習得するには長い時間が必要です。この時間を支えているのが、
人間ならではの高い「学習能力」なのです。
重力の作用するこの地上で、赤ちゃんは誰に教わるでもなく、自分の内側の感覚と、環境からのフィードバックを頼りに、転がり方、立ち方、そして歩き方を学んでいきます。
それだけではありません。家族や社会といった環境の中で受ける刺激、それに対する自分の反応、そして、その反応に対する周囲の反応と言う刺激…
こうした「刺激と反応」の繰り返しを通して、私たちは生きていく術を学習していくのです。
「学習」とは、外からの刺激と、それに対する自分の内側の感覚反応、そしてその反応に対する外からの反応という、相互の関係性の中で生まれるものなのです。
そしてフェルデンクライスで言う学習とは、私たちの神経系がどのように新しい情報を処理し、動きを組織化していくかという、無意識レベルでの、より根源的な学びを指しています。
身体に「正しさ」を押し付けない:学び方を学ぶ
何かを学ぶためには、まず自分の身体に「いる」ことが必要です。つまり、身体の内側に起こる感覚に意識的に耳を澄ます必要があるのです。
内側のつながり、外の刺激に対する内の反応、そう、赤ちゃんの時に内発的に動きを獲得していったように、好奇心、探索、心地よさを基盤にした学習。フェルデンクライスでは、動きを使って、その学習の仕方を再学習していきます。
私たちは、人から何かを強制されたり、押し付けられたりすることが嫌いです。
それは身体も同じ。フェルデンクライスでは、自分の身体に「こうあるべき」「こう動くべき」という「正しさ」を押し付けるのではなく、「今の自分の身体はどの方向に行きたがっているのか」という傾聴力を高めていきます。
これは決して、身体を甘やかすことではありません。むしろ、これまでに途切れることなく続いてきた生命の流れの中で、私たちの神経系が得てきた知性を最大限に発揮させるための方法なのです。
自分の身体が本来持っている、より良い動き方、そして心地よい状態を探求していく、それは身体操作や姿勢の改善にとどまらず、奥底から望む自分自身の人生を生きていくことに繋がっていくプロセスなのです。
